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【図解】パーパスってなんで必要なの?『Purpose経営』の本質に迫る

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今や、ビジネスマンであれば一度は聞いたことがあるであろう、

『Purpose(パーパス)経営』に関して、自分なりの持論を語りたいと思います。

 

ただ、私は経営者ではありません。それでも、“こういうものである”という自身の中で確信めいた考え方がありますので、その内容をお伝えしていきます。

 

 

 

Purposeって何?

そもそもPurposeってなんなのか?

 

その意味の通り、「目的」。

 

企業は何のために存在するか?という問いは様々なところで論じられる。

もちろん株式会社であれば、“株主の為に存在する”であったり、

“利益追求”が企業の本質だ、という考えてあったり、

人の捉え方によって様々。

 

しかし、企業は“人”によって成り立つものである。

であれば、“人”は“何のためにそれを行っているのか”、

この問いに通じていくものだと思われる。

 

ただ、

「企業は何のための存在するか」

という話を、ここでしてしまうと、膨大な語りが必要になってしまう為、

本記事では述べない事する。

 

一点だけ述べるとすれば、人は「目的」があると、

そこに向けて行動する「活力」が生まれます。

その目的に対しての”想い”が強ければ強いほど、

行動には芯が伴っていく。

 

その点に関して、深堀りして論じていきます。

 

**

Purpose経営でよくある話

 

「今日からうちもPurposeを立てるぞ!」

 

この考え自体は良い事。

しかし、その内容が、今バズワードのように語られる、

SDGs」「ESG投資」「世界のサスティナビリティ」にする事だと、

誤った解釈に至ってしまっている場合も見受けられる。

 

そうすれば、“社会や株主から称賛を得られる・利益に繋がる”という、

意図によって立てられた「Purpose」はやはり芯を帯びない。

 

なぜなら、そのPurposeは、

“本当にやりたいこと・目指したいこと”ではないからである。

 

「Purpose」≠「SDGs」「ESG投資」「世界のサスティナビリティ」ではない。

 

**

人と組織の本質

人類史からみる“共通思想”の役割

ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書『ホモサピエンス全史』の中で、

『人類は150名(ダンバー数)以上の直接的な仲間意識を持つ関わりは、

脳の容量として出来ない』という内容が書かれている。

 

しかし、人間は皆で行動するとき、例えば大きな建物を造る時など、

150名以上の関わりを持つのは当たり前。なぜそれが可能となるのか?

 

同著内で書かれている事として、7万年前から3万年前の「認知革命」において、

『虚構、すなわち架空の事物について語る能力こそが、サピエンスの言語の特徴として異彩を放っている』と述べられている。

空想を共有出来る力により、神話が生み出され、大勢で柔軟に協力する空前の能力をサピエンスに与えたとしている。

 

この虚構を生み出す力、空想の共有とは、”思想の共有”だと捉えられる。

 

人間の組織上、大きな物事を成し得る上では、思想の共有を基に、協力関係が紡がれてきた。直接関わりを持たない人とも、同じ目的や価値観を基に行動を共に出来るの
は、“共通思想”を持っているからこそだといえる。

 

*

生物学からみる“想い”

人は、生物学観点から考えると、子孫繁栄の為、また遺伝子を後世に残す為に存在するといわれている。

19 世紀半ばに、チャールズ・ダーウィンが突然変異
自然淘汰に基づく生物の進化論を唱えて以降、生物の行動や特性は子孫をよ
り多く後世に残す為だと言われた。

この進化論に対して、更に、イギリスの進化生物学者であるリチャード・ドー
キンスは、『利己的遺伝子論』を唱え、進化における遺伝子中心の視点を広めた。

ドーキンスは、生物=生存機械論において、あらゆる生物は遺伝子が自己複製する
為に必要な「生存機械」であり、何十万もの遺伝子を含んだ「乗り物」のような
ものであるとしている。その上で、更にとても興味深い考え方を提唱している。
それが「ミーム」という概念である。

 

人の行動には、子孫を残す事で遺伝子を生存させる、という目的からは説明が
困難なことがある。その行動は何を生み出しているのか。ドーキンスが述べてい
る内容をまとめると以下である。

 

『遺伝子の特性は自己複製、それは自己複製を行う実体が、偶々遺伝子だったというだけであり、理論上は、他のものがその実体になりえる。人は子孫を残すだけではなく、本を書く、発明や発見をする、絵や音楽など芸術作品を残す、など個人の創造物を文化として人に伝達し、後世に残す事が可能である。この文化的伝達は、基本的には保守的でありながら、ある種の進化を生じうるという意味で、遺伝的伝達とよく似ている。

ミーム」という概念は、この人の独特の文化の伝達単位として定義され、人から人へと脳内に保存され、遺伝子のように、自己複製を繰り返していく性質を持つ。遺伝子やミームは利己的存在である。純粋で私欲の無い利他主義自然淘汰されてきた。では何故、人は利他主義と取れる行動をするのか。それは、人には想像力を駆使して、将来の事態に先取りする能力を持ち、自己複製子が引き起こす利己的な暴挙を阻止することが出来るからだ』と述べている。(『利己的な遺伝子リチャード・ドーキンス,日高敏隆他訳,2018 ,Kindle 版第 1-6 章、11 章)


人が存在する意義は遺伝子を残す、という物理的な事だけでなく、「ミーム」の概念の様に、文化的な情報を他者に残す行動にもいえる事だとすると、それは“想い”であり、“知恵”を後世に残す、という事と同義なのではないだろうか。そして“利己的に残す”事が生存の性質だとした場合にも、結果他者との協力関係、共存関係にあることが、未来を考えると一番安全に“残す”行動ではないだろうか。

 

そう考えた場合、人の行動原理は、“利他的に動き、自身の持つ思いや創り出す知恵を、後世に伝える役割”こそ、その本質ではないか、その様に考えられる。

 

 

まとめると、

①利他的行動を前提とした上で、”後世の為の知恵を残す”という意思と行動

②その想いを掲げる事で、共感したメンバーが集まり、共通思想を持ち合わせたコミュニティが出来上がる事

 

この二つこそが、人と組織の存在意義であり本質なのではないかと、考えられる。

 

そう捉えると、組織のPurposeが、「社会の為に」である事は、

至極当然の様に考えられる。しかし、その内容が、利己的な意思に沿ったものでなく、

純粋に、”そうしたい”と思える内容なのかどうかが、大事なのだと考えられる。

 

**

Purposeの意義

 

人と組織の本質、という観点から述べてきたが、

“成し遂げたい想い=Purpose”であり、それがある事で、

人の成長を促し、仲間を創り、大きなウネリを生み出せるのだと考えられる。

 

これが、利己的な目的だと、行動はブレてしまうし、

損得勘定に沿った行動になってしまう。

そうなると、やはり仲間は付いてこないのだと思う。

 

そして、何よりも、その“Purpose”がある事で、

内発的動機を引き出す事に繋がる。

 

人は、何かに夢中になり、没頭する時に、大きな力を持つ。

そして高揚感、楽しさが醸成され、幸福度を高める。

これが一過性ではなく、芯を帯びた継続的なものであれば、

なんと良いものか。

 

つまり、

 

Purposeの意義内発的動機を引き出す事

 

こそが、一番の本質なのではないかと、私は考える。

 

 

だからこそ、目先の利己的な目的ではなく、

内から湧き出る力を引き出す、“利他的な目的”である必要があり、

それが人の為、世の中の為であればあるほど、

賛同者は増え、大きな事をなし得る事が出来る。

“人生の意義を創る”。

 

*

「人にとって」のPurposeの意義

改めて、自分なりの持論を以下にまとめてみる。

 

■Purposeの意義

内から湧き出る動機を引き出し、同志を創り、文化を創り、人生を創る

 

-具体的説明-

人は内発的動機により心から突き動かされた行動が出来る。これは“目的”がその気持ちを引き出す。しかし“目的”は利己的なものでは、損得に揺れ、気持ちも行動も長続きせず、心が疲弊する。一方で、“利他目的”は、自身の成長欲求を継続させ、自己の尊厳が生まれ、同じ想いを持つ仲間を創る。そして、その過程で、人生の意義を感じ、幸福度は高まり続ける。だからこそ、Purposeは崇高な利他目的である事が必然である。

 

 

【図解】として表すならば、以下の様だと考える。

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Purposeの意義

 

補足として、Purposeのその先には、心理学者マズローの『自己実現理論』で述べられている“自己実現欲求”とその先の“自己超越欲求”に繋がると考えている。

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マズローの『自己実現理論』における6段階欲求

 

5段階欲求に加え、もう一つ上にあるのが、6段目の“自己超越欲求

利他目的に沿って、その目的をなし得る事で喜びを得る、というものだ。

 

正に、「Purposeのその先」にあるものだと考えられる。

 

*

「組織にとって」のPurposeの意義

人にとってだけでなく、組織にとっても、とても重要だ。

 

組織にはバランスが必要。

 

お金だけ求めていても駄目だし、顧客に寄り添って、自社の利益を見ないのもだめ。

しかしどちらを振り切っていても足りない。

 

企業、組織は人によって成り立つもの。そのため、個々人の心理的安全性や尊厳は大事。

 

そして、自分たちが何を目指しているのか、“共通思想”としてのPurposeは必要不可欠である。

言い換えれば、企業のMission(自分たちの使命)や、What if(自分たちが創りたい世界観)なども、Purposeのそれと同義として捉えても良い。

目指すべき、在るべき“目的”が必要である。

 

このバランスを揃える事が、在るべき組織の姿だ。その姿をVisionに置き換えて、

言語化する事で、皆が目指すべき方向性、組織の文化が育まれる。

 

図で表すと以下の様なイメージ。

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企業・組織で重要な4つの構成要素

 

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おわりに

 

Purposeは、ただ単純に「社会の為に」の目的を立てれば良いものではない。

 

自分たちが“何のために存在するか・誰の為にどの様な事を成し遂げていきたいか

心からワクワクする目的であることが重要だ。

 

それは、きっと、利己的にはなり得ない。

真にワクワクし、心からのやる気漲り、皆から賛同得るものは、

人や組織の本質上、利他目的になるはずである。

 

だからこそ、規模が大きくなくても、「サスティナビリティ」に無理やり繋げて、“それっぽい感じ”にしなくとも、

 

「自分たちがワクワクする、利他主義的な目的」であれば、

 

それは立派なPurposeである。

 

大事なのは、自分たちの内発的動機を引き出す様なものか。

 

その”想い”が自分たちの納得するものであれば、間違いなく、

 

人を変え、組織を変え、世の中を変える事に繋がる。

 

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参考にした本として、

ホモサピエンス全史』と『利己的な遺伝子』を載せておきます。

 

利己的な遺伝子 40周年記念版

利己的な遺伝子 40周年記念版